このコラムをお読みいただいている人の中には、グループインタビューのモデレーターを専業として活躍されている方も少なくありません。また、専業でなくてもグループインタビューのモデレーションをされている方もおられます。そんな皆様のために、今回は、グループインタビューのモデレーションをするのに役立つ3つの記事を紹介させていただきます。
なお自分では、グループインタビューのモデレーションをしないから以下の記事は関係ないと思う人もいるかもしれませんが、いえいえ、そんなことはありません。例えば社内会議でこのようなことはありませんか?
「参加者から意見が出ないお通夜みたいになってしまう」
「話が横道ばかりにそれて、中々結論にたどり着かない」
「上司の自慢話が延々と続いて、ウンザリしてしまう」
運悪く、このような会議の司会進行役になってしまった時に、モデレーターが使っているテクニックが役立つことも多いのではないかと思います。また、モデレーターのテクニックはお客様とのミーティング時にも役立つかもしれません。というわけで、活用シーンはいろいろあるかと思いますので、自分でモデレーションをしない方も、ぜひ以下をお読みいただければと思います。
グループインタビューを活性化させる4つのテクニック
Focus Group Moderating Techniques? Keeping the Group Moving
Jeff Anderson, Jeff Anderson Consulting, Inc.
最初は、米国サンディエゴ、ラホヤにあるJeff Anderson Consulting, Inc.の代表であるJeff Anderson氏の記事を紹介させていただきます。明日のグループインタビューからすぐに使えそうな実践的なテクニックが紹介されています。
<以下、記事の翻訳です>
グループインタビューを活性化させて、グループをあなたが求めている方向に導くための(結果を誘導するという意味ではありませんのでご注意)4つの手法を紹介します。
・“Finish the Sentence”(FTS) Probe
(文章完結プローブ法)
・Probe the“Group Synergy”
(グループシナジープローブ法)
・“Excuse my Interruptions”
(途中割り込み法)
・“Setting the Table”
(テーブルセッティング法)
手法1: “Finish this Sentence”(FTS) Probe (文章完結プローブ法)
「文章完結プローブ法」は対象者に迅速にトピックに集中してもらい、様々な意見を出してもらうために有効な方法です。簡単に言うと、文章完結プローブ法は、あなたが対象者にする質問を懸垂文として問いかけることです。「どうしてそれが重要なのですか?」と聞く代わりに、「それは重要なのは、なぜなら・・・(と文章の続きを促す)」と問いかけるのです。例えば「あなたは朝、朝食の準備で最初にすることは何ですか?」と聞くのではなく、「あなたが朝、朝食の準備と聞いて最初にすることとして思い浮かぶのは・・・・」と聞くのです。
このような聞き方は、あなたが求めている回答をストレートに引き出すことに役立ちます。対象者にとっても、何を答えればよいのか、どのような答えが期待されているのかが、クリアになるので、より意見を言いやすくなります。また、この質問は社会的礼儀の力を利用することによって、対象者からの発言を促します。モデレーターからの質問が「宙ぶらりん」の状態になるので、対象者はそのままにしておくとモデレーターに対して悪いわねという気になり、文章を完結させるために、頭をフル回転させて意見を言うようになるのです。モデレーターの「私のことを放っておかないで!」という訴えかけを上手く利用するのです。
モデレーターにとって「文章完結プローブ法」の最も有益な点は、必要としている情報を回りくどくなくストレートに引き出すことが出来るということです。例えば「あなたがこの製品の最も気に入っているところはどこですか?」と聞くと、
「そうですね、とても便利だと思います。私の家ではいつも・・・・」とか「私の家では子供が3人いるのですが・・・」
といったような背景情報が延々と話され、最後にモデレーターが本当に聞きたい答えにたどり着くのが通常ではないでしょうか。もちろん、このような周辺情報が有益な場合もありますが、貴重なインタビュー時間が、このような話に占拠されてしまっては元も子もありません。そこで、「あなたがこの製品を最も気に入っているのは・・・・」と聞くと、長ったらしい前置きなしにすぐに求めている答えを聞くことができます。
また、「文章完結プローブ法」を使うと、より詳細に求めている回答を引き出すことができます。例えばモデレーターがある製品のエモーショナルなベネフィットを理解したいと考えていたら
「この製品のよい点の一つは、この製品を使うことによってあなたの気持ちが・・・・」
もし、モデレーターがある製品の対競合製品に対する優位性を理解したいと考えていたら
「この製品を他社製品と比べたら、この製品はより・・・・」、「この製品を他社製品と比べたら、この製品に足りないのは・・・・
といった質問が有効です。
このように「文章完結プローブ法」は対象者から、モデレーターが求めている答えをストレートに引き出すのに役立つテクニックです。もちろん、対象者の回答に影響を与え「クライアントが望む回答結果」を誘導することとは一線を引いて利用する必要があり、その点では注意が必要です。しかし文章完結プローブ法を上手く活用することが出来れば、モデレーターはグループの参加者を話し合われているトピックに関して集中させることが出来、グループをスムーズかつ活性化された状態に導くことができるでしょう。
手法2: Probe the “Group Synergy” (グループシナジープローブ法)
定性調査を実施する際には、常にグループインタビューをするのか、デプスインタビューをするのかの判断がなされています。そして、グループインタビューが選択される理由は、「グループシナジー」(注:グループとしての相乗効果、グループダイナミクスと言い換えてもよいかと思います)を期待してのことかと思います。逆にグループインタビューを実施して、このグループシナジーがなければ、それはグループインタビューである意味はないのではないでしょうか。なので、モデレーターはあるトピックに関して、一人の対象者のコメントだけを長々と聞いてはいけません。常に、参加者全員からのインプットを得ようとしなければなりません。
グループシナジープローブ法は、そのような参加者全員からのインプットを得るのに役立つテクニックです。モデレーターは、ある対象者から質問に対する最初のコメントを求めます。そして、そのコメントをプローブする形で、別の対象者にコメントを求めます。そして、それをまた別の対象者のプローブに使うといったことを繰り返します。
例えば
(モデレーター)「あなたがシリアルに求める最も重要な特徴は何ですか?」
(対象者A)「私は、子供が好きだということが最も重要ですね」
(モデレーター:グループ全員に向かって)「皆さんも子供が好きっていうことは重要?」(他の参加者も頷く
(頷いた対象者Bに)「なぜ、子供が好きなことは重要なの?」
なお、参加者全員からのインプットを得るということは、グループのコンセンサスを得ることではありません。グループ、それは一人の人間と同様に、あるトピックに対して様々な感情を持っていると考えるべきです。グループはある課題に関して相反した二つの立場を持っているかもしれません。重要なのは、そうであることを認めることです。参加者全員からのインプットを得た後、「このグループにはAという考え方の人もいるし、Bという考え方の人もいますね。」といったまとめも重要かと思います。
モデレーターはグループシナジープローブ法を上手く活用することによって、あるトピックに関して、グループメンバーの一体感やまとまりといったものを生み出すことが出来るでしょう。そして、このまとまりや一体感は、各メンバーの意見の共有をスムーズにし、グループを活性化しつつ、望むべき方向へグループを導くことになるでしょう。
手法3: Excuse my Interruptions (途中割り込み法)
モデレーターが、対象者が話をしている途中に割り込むことは、話の焦点を合わせたり、グループ内の議論のスピードアップを図ったりするために重要です。話への割り込みは、上記に書いたグループシナジーを作るためには欠くことのできないテクニックです。ただし、モデレーターの割り込みは、同時に、対象者が否定されたような気分になり、気分を害し、その後グループの議論に参加しなくなる危険性をはらんでいることも知っておく必要があります。なので、正しい方法論を知っておく必要があります。
「途中割り込み法」で知っておくべきことは以下の3つです。
<タイミング>
モデレーターは、対象者の話の途中に割り込むタイミングに関して、とても注意深くならなければなりません。対象者が、ある考えを述べ終わって、次の考えを話始めようとする前が、モデレーターが対象者の話に割り込むベストのタイミングです。
<対象者の話を評価する>
モデレーターが対象者の話に割り込むときは、対象者がその時に話していることを評価しなければなりません。「なるほど!そうなんでね。じゃあ、この点はどうですか?」といった、モデレーターからの割り込みは、対象者を不快にさせることなく、話を正しい方向に向けることができるでしょう。
<別の対象者に話を振る>
対象者の話を評価するという点で、上手に、その人の話を、別の対象者に振って引き継ぐというのも上手なテクニックです。
(対象者A)「スマートフォンはキーパッドが大きいことが重要だと思います。」
(モデレーター)「なるほど!そうなのですね。キーパッドが大きいことが重要。キーパッドが大き
いことが重要なのはなぜなら・・・、その点、Bさんどうですか?」
もしくは
(モデレーター)「なるほど!そうなのですね。キーパッドが大きいことが重要。その他に重要なことは・・・、Bさんどうですか?」
このように上手く、他の対象者に話を引き継ぐことが出来れば、話を中断された対象者も不快な気分になることはありません。また、グループに一体化が生まれ、議論がフォーカスされスムーズに進行していくことでしょう。
手法4: Setting the Table (場の雰囲気作り法)
グループインタビューに参加する対象者は、普段からこのようなグループでの会話になれている人もいますが、慣れていない人も多くいます。なので、グループが始まって出来るだけ早い段階で、このグループでの会話がどのように進むべきかを理解する必要があります。私どもは、どのようなトピックのグループにおいても、グループの最初にホワイトボードを使った簡単な練習(場の雰囲気作り)をするようにしています。
例えば、朝食用シリアルに関するグループインタビューの場合、参加者の自己紹介が終わった後、モデレーターはホワイトボードの前に移動して
「じゃあ、今日の話を始めましょう。今日はシリアルに関して皆さんからたくさんのお話をきかせてもらいたいので、最初に少し練習しますね。」、
「私がシリアルを好きなのは・・・・(Aさんどうですか?)」、
「私がシリアルを好きなのは・・・・(Bさんは?)」(4-5人繰り返す)
「じゃあ、私の子供はシリアルが好きです。なぜなら・・・・」(数名繰り返し)
「私の夫はシリアルが好きです。なぜなら・・・・」(数名繰り返し)
上記で説明した「文章完結プローブ法」の質問を早いペースでしていき、対象者から出てきた発言を、ホワイトボードに記入していきます。このようなエクサイズを2分間ほど行うと、参加者はこれからこのグループがどのように進んでいくのか理解でき、自分がこのグループに貢献しなければという気構えが生まれてきて、グループの残り時間は活性化されたものとなることでしょう。
厄介な対象者の対処法
Focus Group Moderator Tips to Handle 7 Unique Personalities
George Kuhn, Research & Marketing Strategies, Inc.
続いて、米国ニューヨーク、シラキュースにあるResearch & Marketing Strategies, Inc.のGeorge Kuhn氏の記事を紹介させていただきます。どんなグループにもいる、ちょっと困った対象者の取り扱い方法について書いてくれています。
<以下、記事の翻訳です>
グループインタビューを数多く実施していると様々な対象者に巡り合います。そして、モデレーターはグループを活性化させるために、どのようなタイプの対象者も上手に対処しなければなりません。以下にちょっと困るグループインタビュー参加者のタイプを7つに分けて、ベテランモデレーターは、それぞれどのように対処しているのかをお知らせします。
タイプ1: The Superstar(スーパースター)
このタイプの参加者は、自分は全てのことを知っていて、全てのことを語ることが出来ると考えて、セッション中のあらゆる機会でそれを表現しようとします。彼/彼女は、このセッションは自分のために用意されたものだと信じており、有益な情報を提供することもあるのですが、グループの会話を支配し、他の参加者にバイアスを与えます。
(モデレーター対処法)
このような対象者には、「あなたの考えや意見は非常に役立ちます。ありがとうございます。」と伝えつつ「他の参加者の意見も聞かせてくださいね」とやんわりと伝えましょう。
タイプ2: The Overachiever(オーバーアチーバー)
オーバーアチーバーは、必要以上に準備万端でグルインに参加する人です。あらかじめ、トピックに関して、「その製品の問題点」、「問題点の改善方法」、「新しい製品のプロトタイプ」等をノートに書いて持って来たりするような人です。
(モデレーター対処法)
たくさんの準備をしてきてくれたことに感謝を伝えましょう。その上で、「グループ内には、ノート等は持ち込まないようにお願いしています。だけど、あとで報告書を書くときに参考にさせてもらうので、グループが終わってから見せてくださいね」と伝えましょう。
タイプ3: Where’s My Money’ Guy/Girl(私の謝礼は?さん)
このタイプの対象者は、グルインルームに入ってくるなり、謝礼について話し始めます。「●●ドルもらえるのは間違いない?20ドル札2枚と、10ドル札を6枚にして欲しいのだけど大丈夫?」なんて話を始めて、他の対象者の気分を害します。(注:日本ではあまりお目にかからないタイプではありますが、海外ではこのような人、結構いるのでしょうかね?)
(モデレーター対処法)
対象者が会場に着いたら、受付で、謝礼はセッションが終わってから、現金で支払う、2週間以内にポイントを付与する等、あらかじめ明確に伝えておきましょう。
タイプ4: The Ax Grinder(肚に一物のある人)
この対象者は、モデレーターのみならず、他の参加者に対しても、一言何か言わずにはいられない、言うことが自分の義務だと考えている人です。まれに、ワンウェイミラーの後ろにいる閲覧者に対しても、気の障るようなことを言い出します。この人は、グループ内の全ての意見に対して、悪魔の代弁者のように批判し、グループを台無しにします。
(モデレーター対処法)
可能な限り、このような人は問題が大きくなる前に参加を断るべきです。なので、リクルート時にこのような人である可能性を感じたら参加させないことが最良のストラテジーです。もし、このような人がグループに参加してしまい、モデレーターがそれに気づいたら、モデレーターがすべき最善の方法は、謝礼を払い、グルインルームから退出してもらうことです。
タイプ5: The Doormat(ドアマット)
ドアマットとは、「人に踏みつけられてもじっと耐えている人」を比喩的に表現した言葉です。このタイプは、自分の意見が他人に否定されることを恐れて、グループ内でも、ほとんど発言をしません。勇気を振り絞って何か発言しても、それが他の参加者から否定されれば、その日は二度と発言しないでしょう。
(モデレーター対処法)
参加者にはグループの最初に、「皆さんの意見や回答には正しいとか正しくないということは全くない」ということを明確に伝えましょう。また、自分の意見が、他の人の意見と同じか、または違っているかを明確にしてほしいことを(頷くとか、首を振るとかだけでもOK)伝えましょう。このような対象者はたまに登場するので、弊社では、あるトピックに関して質問をする前に、簡易アンケートを利用して、そのトピックに関する自分の意見やコメント、評価等をあらかじめに書いてもらうようにしています。
タイプ6: The One Shining Moment Participant(一瞬の輝きを放つ対象者)
このタイプの対象者は、最初は比較的物静かで、多数の意見に従うような素振りしかみせません。何を聞かれても、「はい」、「よいと思います」、「あまり好きではない」等の簡潔な反応しか示してくれません。しかしながら、ある質問に関してだけは、クライアントやモデレーター、他の参加者が驚くほど素晴らしい意見を述べてくれます。その発言が、今回の報告書のメインテーマになるような・・・。ただし、それはほんの一瞬の出来事で、それ以外は物静かな反応の薄い人です。
(モデレーター対処法)
グループをスタートして、「この人ノリが悪いな・・・」、「あまり発言してくれないな・・・」と思う人がいても、その人をディスカッションから除外してしまってはいけません。いつ一瞬の輝きがくるかわかりません。それは、グループの最後の瞬間かもしれません。もしかしたら、グループが終わったあとの雑談の中でかもしれません。最後の最後まで、気を抜かずに参加者全員にグループに貢献してもらうよう努めましょう。
タイプ7: The Over-indulger(きままに振舞う対象者)
この人は、グループ内に議論するよりも、テーブルに置いてある軽食、お菓子、飲み物を飲むのに夢中な人。また、途中で何度もトイレに行ったり、メールをチェックしたりと、ディスカッションよりも他のことに注意関心が行ってしまう人です。
(モデレーター対処法)
テーブルのお菓子や飲み物を飲むのは自由だが、議論に集中するように伝えましょう。また、メールのチェックは休憩時間や、セッションが終わるまで控えてもらうようお願いしましょう。
ベテランモデレーターの使っているテクニック
最後に、かなり古い記事ではありますが、以前紹介した米国RIVA Market Research & Training Instituteの講師であるNaomi R. Henderson氏がベテランモデレーターへ行ったモデレーションテクニックに関する自由記述アンケートを紹介させていただきます。
Insights from a panel of moderators
Naomi R. Henderson
なお、全部訳すとかなり長くなるので(いつもながら、すでにかなり長いですが・・・(苦笑))、個人的に興味を持った部分の抜粋だけ記載させていただきます。全部を知りたい方は、上記リンクより原文をご覧ください。
<以下、記事の翻訳(抜粋)です>
【質問】:あなたがグループを最高なものにするための秘訣は?
「私が心地よくグループを進行できるように出来る事はすべてします。部屋の温度、対象者の配置、部屋の明かり等々。」
「グループにエネルギーを注ぎ込むように努力します。対象者にユーモアを交えて、今日は最もエキサイティングな夜にしましょうと伝えます。もちろん、対象者は、それが本当ではない事がわかっていますが、グループが楽しい雰囲気になり、率直な回答を得る事ができます。」
「私は、グレートな、最高のグループという表現には神経質です。最高なグループとは、対象者が安心して感情を表現できたことによって、豊富な情報を得られたグループだと思います。なので、必ずしもダイナミックで議論が活発で、クライアントが見ていて楽しいようなユーモアがあふれているグループが、最高なグループだというわけではないと思います。最高のグループは、もしかしたら静かで、重々しく、退屈に見えるものかもしれません。私は、モデレーターの、対象者に対する観察力や話を聞くスキル、訓練されたプロービング、調査
課題や調査目的の理解、グループダイナミクスに対する理解や実行スキル、コミュニケーション能力、人に対する繊細さ等が最高のグループを作るものだと考えています。」
「私は、モデレーターは自分にあった独自のスタイルを構築する必要があると思います。と同時に、対象者のタイプにあったコミュニケーションができるような柔軟性を兼ね備えていることも大事だと思います。Myers-Briggs(自己の性格特性を知るテスト)やNLP(神経言語プログラミング)に対する理解や実践は、モデレーターのコミュニケーションの柔軟性を得るために役立つと思います。」
「情熱を持って、モデレーションを楽しむ事が最も重要だと思います。」
【質問】:あなたがグループでラポールを築くために使っているテクニックを教えてください。
「対象者が部屋に入って来たときに、簡単な会話で迎えます。天気の話だったり、週末どう過ごしていたりとか、無難な話をして場を和ませます。」
「私のとびっきりの笑顔で対象者を迎えます」
「対象者の自己紹介のときに、10秒間のアイコンタクトを心がけています。そして、自己紹介には必ず反応するようにしています。例えば、「私は子供が3人いて、全員女です。」といったら、「へ~、それぞれニックネームはありますか?」みたいな。」
「対象者が10代だったら、他己紹介をさせます。ファーストネーム、年齢、学校、皆が知らない驚きの事、みたいなことを話してもらいます。大人のグループでも、盛り上がらなそうな感じだったら他己紹介を行います」
「フルーツの香りがするマーカーを渡して、グループ内でどのように呼んでほしいかを紙に書いてもらい、それを名札にします。」
【質問】:グループでの話が関係ない方向に行ってしまったら、どうやって引き戻しますか。
「『この話は、他のグループに任せて、私たちは、もとの話に集中しましょう』と言います」
「『面白い話だけど、元のテーマに戻りましょう』と言って、次の質問をします」
「対象者に、『この話は今日のトピックから外れているので、このグループが終わってから続けても
らえますか』と言います」
【質問】:対象者の話を深堀するためにあなたが使っているテクニックを教えてください。
「私は対象者をどこにも行かせない。彼/彼女の口から出た言葉について、それが何を意味するのか
を質問攻めにするの。」
「マインドマッピングやラダリングが役に立つテクニックですね。サイコドローイング、パーセプチュアルマッピング、コラージュもよく使います。
「それについて、もう少し話して」、「もう少し詳しく話して」、「もう少し掘り下げてもらえる」といったプローブも役立ちますね。」
「対象者の話に共感し、共感を持って質問することが、彼/彼女たちが本当に言いたいことを理解するのに一番役立ちます。」
「(ある新製品アイデアについて)『この製品を考えた人は、この製品でどのようなことを成し遂げたいのだと思う?』、『この製品を開発しているのはどんな人だと思う?』といった質問は、その製品が対象者に日常とどれだけ関連性(relevancy)があるかを知るのに有効です。『この製品が市場に出たときに、どのようなテレビコマーシャルがよいか考えてみて』、『このグループが終わったあと、友人にこの製品についてどのように話すと思いますか』といった質問もよくしますね」
以上、今回はグループインタビューのモデレーションで役立つテクニックを紹介させていただきました。皆さんにとって何か役立ちそうなテクニックはありましたでしょうか。個人的には、シニアのグルインを実施していると、トピックとは関係ない昔話や、自慢話を延々と聞かされることがよくあるので、そんな時は最初の“Finish this Sentence” (FTS) Probe (文章完結プローブ法)などは、役立ちそうだと思いました。また、若い男性のグルインはお通夜状態になることがよくありますが、そんな時はSetting the Table (場の雰囲気作り法)や、他己紹介なんかを試してみたいと思いました。あと、印象に残ったのは、「必ずしもダイナミックで議論が活発で、クライアントが見ていて楽しいようなユーモアがあふれているグループが、最高なグループだというわけではないと思います。」という指摘。そうですよね。グループインタビューは、参加者全員がよく話をしてくれて盛り上がれば、それがよいグループだと(そして、そのように場を盛り上げることが出来るモデレーターがよいモデレーターだと)思ってしまいがちですが、単に盛り上がればそれでよいというものではないことを肝に銘じておかなければと改めて思いました。
普段モデレーションをしない皆様にも何か参考になる部分はありましたでしょうか?社内会議の司会進行をするにあたって、例えば厄介な参加者の対処法とか役に立ったかと思いますがいかがでしょう(笑)。それは冗談ですが、本コラムが、少しでも、皆様のお役に立てたのであれば喜ばしい限りです。