リサーチ業界に黒船襲来か? Google Consumer Surveyのビジネスモデルについて考える

前回、前々回と、「GRIT 『GreenBook Research Industry Trend Report』の結果を読み解く」というテーマで、リサーチ業界有識者によるWebinarの内容を紹介させていただきました。

その中で、パネリストが最も注目していたのが、GoogleによるリサーチサービスGoogle Consumer Survey(以下GCSと略します)の台頭。

米国ではリサーチ業界にかなりのインパクトを与えているようです。では、GCSが何故それほど注目を集めているのでしょうか?

GCSは日本では、まだサービス化されていませんが、関係者によると日本に進出してくるのも時間の問題のようです。GCSが日本に進出してくると、我が国の調査業界にどのようなインパクトを与えるのでしょうか?今回はGCSについて考えていきたいと思います。

なお、Google Consumer Surveyは定量調査に関するリサーチサービスです。「あれっ、このメルマガは定性調査に関するメルマガではなかったの?」というツッコミをされる方がいるかもしれませんが、前回からの続きということでお許しください(苦笑)

Google Consumer Survey(GCS)とそのビジネスモデル

前回も書かせていただきましたが、Google Consumer Surveyについて、私は、つい最近まで、単に「グーグルがネットリサーチ事業に乗り出したんだ・・・」程度の認識しかもっておりませんでした。でも、よくよく調べてみると、我々が今、慣れ親しんでいるインターネットリサーチとは少し違ったGoogleならではといった感じのビジネスモデルとなっています。実際、何がどう違うのでしょうか。まずは、GCS回答者がどのような経験をするのかストーリー風に書いてみました。

例えば、あなたは大のサッカーファンだとします。今度のワールドカップ、日本はどこまで行けるかな~と待ち遠しくてたまりません。そんな中、仕事中にインターネットで調べ物をしていたら、「ワールドカップ日本代表、鍵を握るのはこの5人 by 中田ヒデ」という記事へのリンクが目に留まりました。これは、絶対読まなきゃと思ってクリックすると、「まず一人目のキーマンはナガトモ!」といったさわりの記事が表示されて、その下に、「記事の続きを読むにはここをクリック」というボタンが登場しました。

残りの4人は誰だろう、こりゃ絶対続きを読まなきゃと思ったあなたは、もちろんボタンをクリックします。すると・・・

「続きを読むには、簡単な2問だけのアンケートにお答えください。アンケートにご参加いただけますか?」という画面が登場。記事を読みたくて仕方がないあなたは、まあ、2問くらいだったらすぐに終わるからいいやと思い「参加する」をクリックしました。すると・・・

「あなたは普段ビールを飲みますか?」という質問が表示されました。あなたは「はい」を選ぶと、次にビールのパッケージ写真が3種類現れて、「PとQとR、あなたが飲みたいと思うビールはどれですか?」という質問が・・・。

まあ、どれでもよいけど、とりあえずPにしておこうと思ってPを選んで回答を送信すると・・・

「ご協力ありがとうございました。では、記事の続きをお読みください」の文字と共に、記事が表示されました。そしてあなたは、その記事を仕事を忘れて読み耽ってしまうのでした・・・

注: もしあなたがアンケートに「参加しない」を選ぶと、「会員登録する」、「記事をFacebookでシェアする」、「お金を払って読む」等の、記事提供者による選択肢が呈示されます。

少し、誇張して書いている部分もありますが、対象者として経験するGCSは、大体このような感じです。お読みいただいたように、従来のネットリサーチとの大きな違いは、以下の3点かと思います。

  1. アンケートへの回答者は事前に登録したアンケートモニターではない。

    現在のネットリサーチは事前に登録してもらっているアンケートモニターに対してメールを配信してアンケートの回答を促すのが一般的な仕組みですが、GCSの仕組みは全く異なります。

    上記の通りGoogleが提携しているコンテンツプロバイダーのコンテンツを見に来たネットユーザーをインターセプトしてアンケートへの回答を依頼します。

    GCSとパートナーになっているコンテンツプロバイダーの代表例としてはPandora(無料動画閲覧サイト)、Adweek(広告業界のニュース配信サイト)、New York Daily News(ニュース)等があり、米国では2013年時点で100サイトを越えているとのことです。

     
  2. 質問数が極端に少ない

    これがGCSの最大の特長かもしれません。30問、40問が当たり前の現在のネットリサーチですが、上記のようにGCSパートナーのサイト訪問者をインターセプトする形式なので、質問出来る数は限られるようです。ちなみに、2012年のサービススタート当初は最大3問までだったのですが、現在は最大10問まで質問可能になっています。もし、10問以上質問したい場合は調査票をスプリットして(例えば20問の場合、10問/10問に分割して同じ条件でスクリーニングされた別の対象者に回答してもらう)ということも可能のようです。
     
  3. アンケート回答の謝礼は、ネット上の記事、コンテンツを読めるということ

    現在のネットリサーチはポイント等でアンケートへの回答謝礼を支払いますが、GCSではネット上の記事を読むことが出来るということが謝礼となっています。

    リサーチャー視点からすると、このような謝礼システムで回答率がどの程度あるのか気になりますが、GCSの開発責任者であるPaul McDonald氏によると、あるコンテンツでは回答率が30-50%にも上るとのことで、この点は従来のネットリサーチと比べて大きなアドバンテージだと述べています。

    上記のようなアンケート回収の仕組みは、Google AdSense (Googleがコンテンツにあった広告を表示し、その広告がクリックされると、コンテンツプロバイダーは報酬が得られる仕組み)をリサーチ版に置き換えたと考えればよいでしょう。GCS利用者からリサーチ利用料金を徴収し、Googleとコンテンツプロバイダーがその料金を分配するというビジネスモデルになっています。


では、GCSを使ってリサーチを実施する人はどのような経験をするのでしょうか。これは、今流行りのセルフ型アンケートを想像してもらえばよいのではないかと思います。

GCSで用意したアンケート作成サイトで、調査画面を自分で作成し、サンプル数や配信ターゲットを決め、スタートボタンを押せばアンケートがスタート。集まったデータは随時GCSのサイト上で確認することが出来ます。そして、予定数が終了したらアンケートは終了、GCSサイトで集計結果を見ることができます。

なおGCSのサイトには結果として見ることが出来るのは以下だと記載されています。

  • Segmentation by gender, age, geography, urbanicity and income.
    (性別、年齢区分、居住地、居住地の都会度、年収)
  • Full cross-question analysis.
    (クロス集計)
  • Interactive charts and data visualizations.
    (インタラクティブなチャート)
  • Automatically generated insights by demographic segment.
    (上記デモグラフィによる有意差検定 <insightsとはこのような意味で使っているようです>)
  • Downloadable charts and data sets.
    (チャートやローデータはダウンロード可能)

ここで、皆さん疑問に思うはずです。登録モニターでもなく、アンケート内でも聞いていないのに、なぜ性別や年齢、居住地といったデモグラフィック情報が分かるのだと?

ここがGoogleならではで、Googleはこれらの情報を回答者のブラウザのCookie(サイトの閲覧履歴)、G-mail等の利用者はその情報、アクセス時のIPアドレスによって類推しているそうです。そんなことわかるの?とお思いの方は以下のURLにアクセスしてみてください。あなたの情報が表示されます。

※URLは現在削除されています

当たっていましたか?私の場合、男性で年齢区分が45-54才というのは当たっていました(ちょっと恐いですね・・・)。IPアドレスで居住地はわかるでしょうし、居住地が分かれば、その地域に住んでいる人の平均年収みたいな情報も米国では簡単に手に入るので、このような類推が可能となってくるようです。

ただし、この類推デモグラフィクスの信頼性については、米国内でも疑念の声が多いようです。例えばMROCで有名なCommunispace社のSinior Director、Katrina LermanがMROCメンバーに、Googleによる自分の情報がどこまで正しいかをアンケートで聞いたところ、性別に関しては80%以上が正しいとの回答でしたが、年齢区分が正しいと回答した人は50%程度だったとのことです。

IPアドレスに関しても、自宅以外の場所でアクセスしている場合どうなるんだみたいな疑問はあるので、類推デモグラフィクスを、どこまで信用して利用するかは利用者次第のようです。

なぜ、GCSが注目され伸びているのか?

なぜここまでGCSが注目され伸びているのでしょうか?その理由は単純明快です。「スピードが早い」、「使いやすい」、そして「安い」が大きな理由です。

どのくらい安いのか・・・GCSの価格表を見ると質問数が1問だけの場合(スクリーニングなし)、1サンプルあたりの完了に対して10セント(約10円)となっています。つまり100サンプルx1問だけの調査をしたら僅か1000円です!

質問数が2問以上の場合は、やや単価があがり2問/1完了=1.1ドル(約110円)、最大の10問/1完了で3.5ドル(約350円)となっています。100サンプル10問の調査を実施したとしても、約3万5000円となり、かなりの安さです。ネットリサーチの価格破壊が進んでいる日本では、1問1サンプル10円みたいな料金で実施されている会社さんもありますが、日本よりネットリサーチの料金がかなり高い米国であれば、この料金は衝撃的な安さだと感じられていることでしょう。(そもそも、米国において、日本のような「サンプル数 x 質問数 = ●●円」みたいなマトリクス料金表を見たことがないのですが、米国にはこういう明朗会計のリサーチ自体が目新しいのではないでしょうか?)。

そして、この安さに加えて、完全セルフで実施出来るという「使いやすさ」と、24時間以内にデータが集まるという「スピード感」が加わり、米国ネットリサーチ業界に旋風を巻き起こしているようです。

この「早い」、「安い」、「使いやすい」がもたらす結果として、最も注目すべき点は、リサーチの利用者層が変わるということです。この点に関しては、先ほども紹介させていただいたCommunispace社のKatrina Lermanの言葉がすべてを言い表していると思います。

That’s a fast, cheap, easy-to-use service with a potential customer based comprising … well, almost any company in the world. 

To us, this is one of the most exciting aspects of GCS: simply that it makes consumer research accessible to an entire universe of small businesses who previously had to rely on their instincts alone.

早くて、安くて、使いやすいサービスなので、『ポテンシャルとなる利用者は、世界中のほとんど全ての会社』。GCSの最もエキサイティングなところは、今までに決してマーケティングリサーチをせずに(出来ずに)、直観だけに頼って意思決定をしていた中小企業に、消費者リサーチというツールを提供することが出来るようになったことね。

これからGCSはどこに向かうのか

GCSは今後何を目指し、どこに向かおうとしているのでしょうか?GCSはリサーチ業界にとって味方なのでしょうか、敵なのでしょうか?この点に関して、GCSの開発責任者(Product Lead/Founder)であるPaul McDonald氏への興味深いインタビューがありました。以下に、簡単にポイントをまとめさせていただきます。

なお、いつものごとく内容は端折っていますので、詳細を知りたい方は以下のビデオをご覧ください。また、全く余談ですが、以下のビデオはNYとサンフランシスコを繋いだオンラインでのインタビューで実施されています。オンラインでも、このようなクオリティでインタビューができます。かつ家の様子もわかります(さすが大きな部屋に住んでいますね~)。オンラインでのインタビューもよくないですか?ちょっと宣伝でした(笑)

(このインタビューは今年2月に実施されています)

  • 我々はマーケティングリサーチサービスをしているのだけど、同時にコンテンツプロバイダーを助けるプロジェクトを行っているのだ。

    注: GCSはコンテンツプロバイダーについてパブリッシャーという言葉を使っています。特にWEBの普及によって新聞社が利益を得ることが難しくなっていることに問題意識を持っているようです。
     
  • 昨年末にモバイルバージョンもリリースした。今は特に大きなプロモーションをしていないが、すでに多くの人に利用されている。徐々に新しい機能も追加していく予定で、モバイル対応は2014年に力を入れていく分野だ。
     
  • 2014年のプランはまずインターナショナルになること。現在サービスを展開しているのは、米国、UK、カナダだけだが、もうすぐオーストラリア等の英語圏のいくつかの国でサービスをローンチする予定。その後は西ヨーロッパと日本、中国、韓国等のアジア、ラテンアメリカも計画していて、年度末には40カ国、40の言語でのサービス展開を計画している。
     
  • プロダクトのプラットフォームをスケールアップすることも計画している。新しいタイプの調査が出来る機能を追加しようとしている。
     
  • GCSをGoogleの広告と結びつける事も考えている。例えば誰かが、自動車保険の検索をして、保険会社の広告が表示された際に、その会社の満足度は何点みたいなGCSの調査結果が出るようなことも考えている。
     
  • 特にヨーロッパでは個人情報保護の問題をシリアスに考えている。基本、ネットユーザーの情報を取得する際には、事前に同意を取得する事が重要だと考えている。ただ、これはこれまでのGoogleのやり方・スタンスと違う部分もあるので、我々のチーム内でも様々な議論をしているところだ。
     
  • 例えば、対象者にGCS の対象者にWEBカメラでインタビューしたり、その表情を分析して感情分析したりすることが出来ないかといったリクエストが多数寄せられている。このようなことはもちろん可能だが、こういった対象者と長い時間のインタラクションを行う事は現在の我々のビジネスモデルとは少し異なる。我々は、回答時間を出来るだけ短くしたいと考えているので、今はあまり興味がない。そのような事に優れた調査会社がたくさんあると思うので、Googleがその分野に乗り出す必要はないと思う。
     
  • 新しい技術に関して言えば、顔表情分析等、Google内で興味を持っている人もいるけど、上記の通り、私個人的にはあまり興味はない。Googleのすることではないと思う。AI(人口知能)の分野にも面白いテクノロジーがあるが、今の段階では実用化の初期段階で、すぐに実用化されるものは見えていない。
     
  • 仲間と、これまでの多くのビジネスの成長に関して議論してきた。最初から大規模にスタートするビジネスもあるが、最初はスモールビジネスからスタートして、ある時点で飛躍的に拡大するものもある。例えばYouTube。最初は小さな動画投稿サイトだったのが、今ではアメリカのすべてのミュージシャンがビデオクリップをのせる大規模なものになっている。GCSもローンチしてから現在まで、これまでにリサーチをしてこなかったような中小企業を中心に利用が進んでいる。

    しかしながら、利用者が増え、利用方法の知見が蓄積されつつあり、最近では調査予算が莫大な大規模企業が使い始めたり、大手調査会社が利用したりするようになってきた。逆にそういう中から今までに想定しなかったような利用方法も現れ始めていて更に知見がたまってきて面白い流れになってきている。

    注: この4月にGCSはKantarグループのLight Speed GMI社とパートナーシップを結んだというニュースがありました。クイック、安価なリサーチをしたい。だが、調査票作成等にはプロフェッショナルなノウハウが欲しいといったクライアントニーズにLight Speed社がノウハウ提供、GCSがデータコレクションを行うことによって応えるサービススキームのようです。
     
  • リサーチ利用者に対して、データコレクションという点では、我々は他のリサーチ会社よりもかなり低いコストを提供出来る。だからといって、我々はリサーチ会社を競合とは考えていない。彼らのパートナーになりたいと考えている。我々は今彼らの負担になっていることを取り除こうとしているのだ。そして彼らにもっと付加価値をつけることに力を注いでほしいと考えている。
     
  • GCSのデータクオリティに関しての議論は常にある。我々は例えば政府の公的調査データとGCSの結果を比較する等して、常に改善を測っている。そのような議論があるからこそ、我々は進歩していくのでそのような議論は歓迎している。

    注:データの信頼性という点で、GCSは2012年の大統領選でのオバマ氏勝利を、どのネットリサーチ会社よりも、あのGallup社よりも正確に予想したということをアピールしています。http://fivethirtyeight.blogs.nytimes.com/2012/11/10/which-polls-fared-best-and-worst-in-the-2012-presidential-race/?_php=true&_type=blogs&_r=0

     
  • GCSが2014に最もエキサイティングだと考えている事はモバイル。ネットへのアクセスがPCからモバイルに変わってきている事は、リサーチ業界にとっても大きなビジネスチャンスである。世界ではPCユーザーよりもモバイルユーザが圧倒的に多いという事は、より世界中のデータを集める事が出来るということ。また、モバイルに付随している様々な機能、例えばGPSやカメラやマイク等はリサーチの可能性を大きくひろげるものだと思う。

Google Consumer Surveyは我が国のリサーチ業界にとっての黒船か?

皆さんは、Paul氏のインタビューをお読みになってどのようにお感じになりましたでしょうか。私は赤ずきんちゃんの話を思い出してしまいました。

オオカミは味方のふりをして、赤ずきんちゃんを油断させ、最後は赤ずきんちゃんを食べてしまいます。Paul氏はリサーチ会社とパートナーになりたいと言っていますが、油断させておいてリサーチ業界を飲み込んでしまおうとしているように聞こえました。広告業界を変えてしまったGoogleです。その気になれば、もっとちっぽけなリサーチ業界を飲み込んでしまうことは簡単だと考えているかもしれません。

そんなGCSが日本にやってくるのも、そう遠い日ではなさそうです(プラン通りであれば今年中!)。GCSがやってくることは我が国のリサーチ業界、特にネットリサーチ業界にとっては黒船がやってくることなのでしょうか?

以下、定性調査をメインにしている弊社にとっては他人事にように書きますが(笑)、私は、現在のネットリサーチ業界の構図を書き換えてしまうほどの衝撃をもたらす可能性があると考えています。その理由は、GCSが現在のネットリサーチ業界が手を出すのが難しいロングテールビジネスであるという点です。

我が国でも、ネットリサーチが普及することによって、リサーチユーザーのすそ野は大きく広がりました。それでも、現在の日本でリサーチをしている企業は全企業の数%にも満たないのではないでしょうか。日本の企業は99%が中小企業だと言われていますが、現状、この99%の中小企業がお金をかけてリサーチをすることは皆無に等しいかと思います。しかしながらGCSはこの99%を対象にビジネスが出来るポテンシャルがあります。

例えば、八王子でラーメン屋を経営するオヤジさんが、Googleで「ラーメン、新メニュー」みたいな検索をしました。そこで検索結果の横に、「ラーメンの新メニュー開発にGCS。八王子のラーメン好き消費者へのリサーチが1000円から実施出来ます。」みたいなGCSの広告を出されると、「Googleがやっていることだから信頼できそうだし1000円なら今考えている新メニューについてリサーチしてみようか・・・」となることも、十分にあり得るのではないかと思います。

Communispace社のKatrina Lermanの言葉を再度書きますが、このようにGCSの『ポテンシャルとなる利用者は、世界中のほとんど全ての会社』なのです。

注:現時点でGCSは上記のような検索連動広告や地域限定リサーチをしているわけではありません。あくまで、Googleならこのようなことも将来簡単に出来るだろうという意味で書かせていただいいております。

そして、このように日本でも中小企業の利用から始まり、それが進むと、現在のネットリサーチユーザー(リサーチ予算が潤沢な大企業)からの乗り換えが始まりだす・・・これが、現在米国で起こりつつあることであり、日本でも同じことが起こらないと言える理由はありません。

もちろん現時点では、リサーチャーの目から見ると、GCSのクオリティに関して疑問符がつく点も多いかと思います。特に類推デモグラフィクスに関しては、日本でも様々な議論が沸き起こるでしょう。とはいえ、質問可能数が当初3問までだったのが、現在10問になるなど日々改善がなされています。今後も様々な点でクオリティは進歩していくものと思われます。

また、GCSの価格が日本でどうなるかはわかりませんが、価格が日本においては、それほど衝撃的でないかもしれません。しかしながら日本のリサーチ会社が価格だけは同レベルで戦えたとしても、Googleに決して勝てないものがあります。Googleというブランド力、およびネットユーザー(=リサーチユーザー&リサーチ回答者)へリーチする力は、残念ながら日本の調査会社が寄ってたかっても足元にも及びません。今後、日本でいくら安いリサーチ会社が登場したとしても、上記のように八王子のラーメン屋のおやじにリーチして、リサーチユーザーに変えてしまうことは難しいでしょう。でも、Googleならそれを簡単にやってしまうことが可能なのではないかと思います。

また、今後オンラインリサーチのメインになるであろうスマートフォンという端末をGoogleが押さえている点に関しても、(実際には、彼らが何をしてくるかわかりませんが)脅威です。極端な話、アンドロイドのスマホには、GCSのアンケートアプリがプリインストールされているみたいなことになったら、どのようなことのなるのでしょうか(ま、実際にはそこまではないとは思いますが・・・)。

このように考えるとGoogle Consumer Surveyが日本にやってくるのは、日本のリサーチ業界にとって黒船襲来と同じくらい衝撃だと思いますが、皆さんどう思いますか?

個人的には、とりあえず定性調査の分野にはあまり興味なさそうなので、少しホッとしていますが・・・(笑)