定性調査の父
アーネスト・ディヒターに学ぶ

皆さまは普段利用しているグループインタビューやデプスインタビューがいつどこで始まり誰がどのように発展させてきたのかを存知でしょうか。

実は私は今まであまりよく知りませんでした。ただ、普段毎日のように関わっているものなのに、それを知らないのも恥ずかしいと思い少し調べてみることにしました。

そこで知ったのはアーネスト・ディヒターという人の存在です。

ディヒターは「モチベーショナルリサーチの父」、「フォーカスグループの父」、「定性調査の父」等と呼ばれ、定性調査の発展に多大な影響を及ぼした人物だそうです。今回は彼の歴史や功績を紹介しつつ彼の教えを現在の定性調査にどのように生かせばよいのかを考えてみました。

フォーカスグループの名付け親、アーネスト・ディヒター

我が国でグループインタビューと呼ばれる手法、米国ではFocus Group(フォーカスグループ)と呼ばれることを皆さんご存じかと思います。このフォーカスグループという名称の名付け親だと言われているのが、今回紹介するErnest Dichter(アーネスト・ディヒター)です。

ディヒターについてウイキペディアでは

「アーネスト・ディヒター(1907-1991)は“モチベーショナルリサーチの父”と称される米国の心理学者兼マーケティングエキスパートである。ディヒターはフロイト心理学のコンセプトとテクニックを消費者行動分析に持ち込みビジネスに応用したパイオニアである。彼のもたらした分析手法は20世紀の広告代理店ビジネスに多大な影響をもたらした。」

と紹介しています。

またディヒターの業績を紹介したThe Economistの記事には

1930年から60年において、ディヒターはP&G、エクソン、クライスラー、ゼネラルミルズ、デュポンといった企業のビジネスを革命的に変革したことで有名である。彼の発見したインサイトはクルマからケーキミックスまで何百もの製品の売り上げを向上させた。また彼はフォーカスグループといったリサーチテクニックの開拓者であり、口コミの説得力に最初に気づいていた人物でもある。クライアント企業は彼の理論に驚くほどの高額なフィーを払い、彼はスーパーマーケット時代のフロイトという名声も得ていた。

とあります。また、彼の登場した時代背景について以下のように説明しています。

ディヒターが登場する前、1920年代、米国ビジネスはナショナルブランドが市場を席捲し始めており、企業は競合を市場から追いやるためにとてつもない時間と金を注ぎ込んでいた。それに伴い広告代理店は、大衆に混ざりこみ買い物客に(定量的なサーベイ)インタビューをし、彼らの好みを理解しようとやっきになっていた。

しかしこうやって行われていたサーベイはずさんなものであり空虚なものであった。ビジネスは定量調査の限界を感じ始めていた。なぜなら、消費者がなぜ、どのように行動しているのかという本物のインサイトをほとんど提供しなかったからである。ディヒターは皮肉を込めてこう言った。

「買い物客になぜその商品を買ったのかを聞くことは、ノイローゼ患者になぜ自分がノイローゼだと思うのかを聞くのと同じようなことだ」

ディヒターは、ほとんどの人はなぜその商品を買ったのかという理由を自分では何も理解していないと信じていた。もし聞かれたらインタビュアーの役に立ちそうな答えをしようと努力するかもしれない。ただし、それは過去に行った意思決定を遡って意味づけしているだけなのだ。本当に人々を動機づけているものを理解したければ、彼らの日常生活について、ある程度時間をかけて丹念に聞き出すことが必要なのだ。ディヒターは多くの人に短い質問をするのではなく、少数の被験者に深く、心理学的なアプローチでインタビューすることを好んだ。

「もし、あなたがだれかと十分長い時間対話をすれば、あなたは彼/彼女の話の行間を読むことができ、彼らが本当に語っていることに気づくことができるのだ」

ウィーン出身のディヒターが米国にやってきた1938年は、このディヒターのアイデアが花開くのに完璧なタイミングであった。米国においては従来とは違った新しい概念に対する知的好奇心が非常に高まっており、フロイト心理学がセクシーになりつつあった時期である。

モチベーショナルリサーチから生まれた大ヒット商品

ディヒターの功績や凄さを知るには、実際に彼が行ったリサーチプロジェクトを知るのが一番わかりやすいと思います。彼はThe Economistの記事にあるような米国を代表する企業のリサーチコンサルタントとして数多くのプロジェクトを成功させてきました。

以下にその中でも特に有名な2つのプロジェクトを紹介させていただきます。これらのケースを読むとディヒターのモチベーショナルリサーチの神髄に触れることができるでしょう。

P&G社:アイボリーソープのマーケティングキャンペーン

ディヒターがリサーチャーとして最初に関わったプロジェクトとして有名な案件です。

その当時、P&G社のアイボリーソープは期待していたほどの売れ行きを示していませんでした。そこでアイボリーソープの広告を担当していた広告代理店に勤務していたディヒターはニューユークのYMCAで100名のデプスインタビューを実施しました。そのデプスインタビューから

「体を洗うという行為は単に体の汚れを洗浄するだけではない。そこには汚れきった世の中から精神的な清廉さを保つという心理的なニーズも含まれているのだ。せっけんを買うという行為は精神的/道徳的な純粋さを保ちたいというニーズによって動機づけられている」

と結論付けました。そして

“Get a fresh start with Ivory Soap, and wash all your troubles away.”

アイボリーソープであなたの悩みを洗い流してリセット。フレッシュなスタートを切ろう

という広告コピーを生み出しました。このコピーを使ったキャンペーンは大成功してその後アイボリーソープは大ヒットしたそうです。このアイボリーソープのプロジェクトはディヒターがモチベーショナルリサーチに自信を深めるきっかけになりました。

ゼネラルミルズ社:ケーキミックスの製品リニューアル

このケースも非常に有名で人の深層心理を理解することの重要性をわからせてくれる好事例だと思います。

ゼネラルミルズ社のケーキミックスブランドであるベティークロッカーは水を加えて焼くだけでおいしいケーキが作れるという画期的な製品を開発し発売しました。しかしながら、期待しているほどに売れずに経営陣はとても悩んでいました。

「この製品は従来品と比べてこんなに簡便なのになぜ主婦は買わないのだ?」

その答えを探るために、ディヒターは主婦を集めグループインタビューを実施、その中で、自由連想やロールシャッハテストといったフロイト心理学のテクニックを駆使して原因を探りました。

そこで「ケーキはウエディングケーキを連想させ夫との関係を象徴するセクシャルなものである。」また、この製品はあまりに簡単で便利なので「主婦はこの製品を使うことによって愛する夫のために手抜きをしてしまったという罪悪感を感じている」と分析したのです。

この分析結果からディヒターはゼネラルミルズ社の経営陣に、この製品フォーミュラに含まれているパウダーエッグを取り除き、「玉子を加える」というステップをこの製品を使用する際のインストラクションに加えることを提案しました。

「主婦にとって玉子は自分の分身であり繁殖能力を象徴するものでもある。それをケーキに加えることは夫にギフトを与える感情をもたらし、罪の意識を軽減させる」

という主張と共に。

半信半疑だったゼネラルミルズ社の経営陣も、この変更後ベティークロッカーの売り上げが急上昇して驚いたそうです。

上記以外にも有名な事例が多々あります。例えばクライスラー社のPlymouthブランドのために行ったリサーチでは、男性ドライバーにとってオープンカーは愛人の象徴で、セダンは妻の象徴であるという分析を行いました。そしてクライスラー社に対して女性をターゲットとして「オープンカーを持つことは男性を満足させ家庭を安定させることである」という広告を出すことを提案しました。

スタンダードオイル社のためのリサーチでは男性ドライバーにとってクルマは男性の性的能力を象徴するものだという分析を行い「Put a tiger in your tank(あなたのタンクに虎を入れろ)」というその後長く続いた広告キャンペーンを生み出しました。

米国のリカちゃん人形と言われるマテル社のバービー人形の成功にもディヒターは大きく関わっています。発売当初マテル社の経営陣はバービー人形の容姿がセクシーすぎて母親が不快感を抱くのではないかと心配していました。しかしながらディヒターは

「大丈夫。この人形の容姿は自分の娘が将来有能な旦那を見つけるためにどうあるべきか、いわゆる”身だしなみ”を教えるということを母親は無意識に理解するだろう」

というアドバイスを行いました。米国の少女全員が一度は遊んだことがあると言われるほどバービー人形が大ヒットしたことは皆さまご存じの通りです。

このような数々の大ヒットを生み出したディヒターは1950年代の米国マーケティング業界で超売れっ子のリサーチャーとなり一躍時の人となりました。それと共に高額なコンサルティング料を得て巨万の富を築いたそうです。

ところで、上記に紹介したディヒターの分析ですが皆さまはどう思いますか。すべての説明を性に関連付けるのはフロイト心理学らしいですね。と同時にフロイト心理学がそうであるようにちょっと飛躍しすぎでホンマかいな・・・と思う人も多いのではないでしょうか。実際、米国でもディヒターの分析は非科学的で彼の想像物に過ぎないという批判は少なくなかったようです。皮肉を込めて彼は優秀なリサーチャーではなく、優秀なコピーライターだという人もいたようです(確かにそういう気もしますが・・・)。

また、あまりの成功に「米国市民はディヒターのモチベーショナルリサーチによって無意識のうちに心理操作されている。米国市民はジョージ・オーウエルが書いたSF小説、ビッグブラザーの時代にいるようだ」といった批判を受けたりもしました。逆に言えばディヒターのモチベーショナルリサーチは、それほど、その当時のマーケティング業界に影響力があったということでしょう。

ディヒターの教えを現在の定性調査に生かす

ディヒターが開発したモチベーショナルリサーチは過去の遺物ではありません。現在のマーケターやマーケティングリサーチャーにも大いに役立つものかと思います。Forbesの記事にモチベーショナルリサーチを製品開発に生かす方法が紹介されていましたのでその要旨を以下に紹介します。

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ディヒターによると製品の消費は13のモチベーションによって動機づけられる。そして各13のモチベーションが違った製品の選択をもたらす。この13のモチベーションは

  1. power(権力/支配欲)
  2. masculinity-virility(男らしさ)
  3. security(安心・安全への欲求)
  4. eroticism(エロチシズム/性欲)
  5. moral purity/cleanliness (道徳的な清廉さ)
  6. social acceptance(社会的承認欲)
  7. individuality(自分は他人とは違うと思いたいという欲求)
  8. status(地位・ステータス)
  9. femininity(女性らしさ)
  10. reward (報酬・ご褒美)
  11. mastery over one’s environment (自分の周りの環境のコントロール)
  12. disalienation (a desire to feel connected to the world around us) (社会とつながりたいという欲求)
  13. magic-mystery (不思議な/神秘的な力へのあこがれ)
     

である。あなたの製品・サービスがこの中のどの欲求によって購入されているのかを理解することは、あなたの製品・サービスのポジショニングや価値提案、マーケティングキャンペーンの礎となるものである。

マーケターがマーケティングリサーチをする目的は消費者の製品・サービスに結びついているモチベーションやニーズ、ウオンツ、恐怖を理解するためであるべきである。そこでデプスインタビュー、エスノグラフィのような観察調査、グループインタビューといったテクニックを用いて、なぜ消費者がそのような行動をしたのかを説明する信念や態度を理解すべきである。その信念や態度は時には顕在化しているが無意識に存在している場合も多い。

あなたがリサーチを実施したら、各対象者の発言録を何度も何度も読み返すことに時間を費やすべきである。そうすることによって、時には明示されている、時には黙示的なパターンを探すのである。インタビューで対象者が口にした言葉と同じくらいに、口にしなかったことに注意を注ぎ、モチベーションの発見を試みるのである。

そのためには以下の質問を自問してみることをおすすめする。
 

  • あなたの製品・サービスは消費者の機能的なニーズ以外に心理的なニーズを満たしているのだろうか。もしそうであればどのような心理的なニーズだろうか。
  • あなたの製品は消費者のどのような感情に結びついているのだろうか(例:競争心、自尊心、安心感・・・)
  • あなたの製品は消費者の何を象徴しているのだろうか
  • 消費者はあなたの製品カテゴリーにどのような恐怖・不安を抱いているのであろうか
  • あなたの製品やサービスにはどのような外部的な圧力(文化や準拠集団)がかかっているのだろうか

あなたのビジネス背景や文脈に基づき上記の質問の答えを考えることを忘れてはいけない。そうすればあなたが発見した消費者のモチベーションがマーケティングインサイトを導き出すであろう。

そして次にあなたがすべきことは定性調査で見つけた発見(モチベーション)を定量調査で検証することである。しかしながら、モチベーショナルリサーチからの結果は単純なサーベイでは検証されない場合が多い。特にそのモチベーションが顕在化していないものである場合はそうである。そのような場合には、モチベーショナルリサーチから見つかった様々なモチベーションに基づいて作られた広告コンセプトを検証することによってモチベーションを検証するのがよい。

消費者のモチベーションを理解することはマーケティングやブランディングにとても重要になりつつある。何が消費者を動かしているのかは当てずっぽうで探るべきではない。正しいモチベーショナルリサーチはあなたのチームに成功するマーケティングコミュニケーションとイノベーションの実現をもたらすであろう。消費者のモチベーションをミステリーにしてはいけない。科学的なモチベーショナルリサーチを実施することによってあなたのブランドは成功する確率を高めることができるであろう。

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皆さん、いかがでしたでしょうか。ディヒターが生み出したモチベーショナルリサーチから我々が学ぶことも多々あるのではないかと思いましたが皆さまはいかがでしょうか。

個人的にはインタビューの重要性と可能性を再認識したというのが一番大きな学びです。

昨今、脳波を測定したり表情解析をしたりといったニューロ系のリサーチ手法に注目が集まっています。この注目は人間の行動や意思決定には無意識(潜在意識)が大きな影響を及ぼしていることが分かってきており、その無意識は、インタビューでは探ることはできないと考えられているからかと思います。しかしながら本当にそうなのでしょうか。人間の無意識は高価な脳波測定器や表情解析ソフトを利用しないと探ることができないものなのでしょうか。

その手法や分析の再現性や信頼性に批判はあるものの、ディヒターはインタビューによって人の無意識を明らかにすることを試みました。そしてインタビューを通して数多くの製品・サービスの大ヒットを生み出したということは紛れもない事実です。インタビュー調査の限界が語られていることの多い現在の定性調査業界ですが、今回ディヒターのことを知りインタビューの価値や可能性を再考すべきかと思いました。

とはいえ、そのためには現在多く行われているインタビューのままでは不十分かとも思います。

「なぜあなたはその銘柄のせっけんを買ったのですか?」

現在のインタビュー調査でよくある質問ですが、ディヒターはこんな質問を繰り返して聞くことは愚の骨頂だと考えました。その代わりに直近のせっけんの購入した状況について丁寧な“open-ended conversations”を重ねて、購入した理由を見つけていきました。なぜ彼/彼女らがそうしたのか?という理由を決めるのは、人間のモチベーションを調査しているリサーチャーであるとディヒターは教えているのです。

消費者の無意識の行動を理解するためにインタビューの手法や分析技術はまだまだ発展の余地があるのではないでしょうか。無意識を探るために高価な機械やソフトを取り入れるのも大事だとは思いますが、その前に現在行われているインタビューの手法や分析技術を見直してみることも重要なことのように思います。例えば以前紹介したコグニティブインタビューの技術などは今後もっと研究され活用されるべきかもしれませんね。

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さて、今回はここで終了としようと思ったのですが、定性調査の歴史を調べていてもうひとつ興味深いことがありましたので補足として以下に紹介させていただきます。グループインタビューの始まりについてです。

補足・・・フォーカスグループの始まりと、もう一人のフォーカスグループの父

グループインタビュー(フォーカスグループ)がどのように始まったのかには諸説があるようですが、ウィーン出身で米国コロンビア大学の社会学者であったRobert Merton(ロバート・マートン)と Paul Lazarsfeld(ポール・ラザースフェルド)が1941年に始めたというのが有力な説のようです。

先日、ラザースフェルドの妻、リサ・ラザースフェルドが「Divining Desire:FOCUS GROUPS AND THE CULTURE OF CONSULTATION」という本を出版され、その時の様子を紹介しています。私もその本を読んだわけではないのですが、そのサマリーがこの記事に記載されていましたので以下に紹介します。

この記事によると、フォーカスグループの始まりはラザースフェルドが実施していた戦争広告の調査にマートンがたまたま同席していたのがきっかけだそうです。

ナチスが台頭していたその時代、米国Office of War Information(OWI)の仕事を請け負っていたラザースフェルドは急きょ、OWIから彼らが制作した、米国民に米国が第二次世界大戦に参戦することを納得させるための4種類のラジオ・プロパガンダのどれが効果的か評価するテストしてくれという依頼を受けました。

「今からテストしてくれ、急ぎで結果が必要なんだ!」
(このあたりは昔も今も、洋の東西を問わず変わらないようで(笑))

急きょ、ラザースフェルドはニューヨークの59ストリートの古めかしい部屋に十数名の被験者を集めました。その夜、たまたまラザースフェルドの自宅でのディナーに招待されていたマートンも、仕方なく一緒に会場に行くことにしました。そこでラザースフェルドは独自に開発した調査機器を利用して、ラジオ・プロパガンダを流しながら、各シーンで「好き」「嫌い」といった定量的な結果を測定していきました。

その場に同席していたマートンは、その様子を退屈そうに見ていました。彼はこのような手法を見るのも初めてで、ディナーを食べ損ねたために空腹だったこともあり、早く終わらないかなということだけを考えていました。しかし、その後、ラザースフェルドの若手スタッフが、なぜそこで好きを押したのか、なぜ嫌いを押したのかを被験者に質問し始めたことに興味を覚えました。彼はその様子に注視し始め、「なぜ、その点をもっと聞かないの?」、「今のは答えを誘導しているんじゃないの?」といったメモをラザースフェルドに渡し始めました。

「じゃあ、君がやってみたら?」

ラザースフェルドがマートンに告げ、マートンが被験者に質問(インタビュー)をはじめました。ラザースフェルドはマートンがインタビューする様子を見て、とても興奮したそうです。そして二人は、その夜の経験について明け方まで語り合いました。そして、この夜をきっかけに二人でこの手法を発展させていったというのが、フォーカスグループの始まりだそうです。その後、マートンは“フォーカスグループの父”と言われるようにまでなったそうです。 

なお最初に書いたようにディヒターはフォーカスグループという名称を初めて使った人であり、ディヒターもフォーカスグループ父と呼ばれることもあるようです(ただし、モチベーショナルリサーチの父と称されることの方が多いようですが)。マートンが産みの親で、ディヒターが育ての親といった感じでしょうか。

また、ディヒターとラザースフェルドは、両者が米国に来る前のウィーンでは統計学の教師と生徒という関係だったそうです。ユダヤ人であるディヒターは31歳の時、ナチスがヨーロッパで台頭し始めたころ、その影響を逃れるためにニューヨークにやってきました。そして、先に米国で仕事を始めていたラザースフェルドの紹介によって、マンハッタンの広告会社で職を得たのがきっかけで先述のような成功への道を歩み出していったとのことです。