リサーチはマーケティングで最も重要な決定に貢献してるんやろか?
真剣に考えました

今回、何について書こうか、正直、めちゃくちゃ悩みました。

真剣に真剣に考えて、そして思ったんです。マーケティングリサーチはマーケティングで最も重要な●●●●●の決定に貢献してるんやろかって?

この気持ち、どんどん強なってってます。もうこれは書かなあかんのちゃうかなって。

今回の記事、弊社の言いたいこと、包み隠さず、全部いいます。

この記事を読み終わった時の皆さんの反応、どんな感じかめっちゃ楽しみです。

マーケティングで最も重要な決定事項

突然ですが皆さまに質問です。あなたは最近、住んでいる最寄り駅の近くに新しいパン屋さんができたという噂を耳にしました。そのパン屋さんの名前は・・・

P:ベーカリー・トモナガ

Q:ベーカリー・トゥレーヌ

R:考えた人すごいわ

であったとしたら、あなたが最も行ってみたいと思うパン屋さんはP、Q、Rのどれでしょうか?

100人に聞いたらイワマさんを含む一部の人を除いた93人くらいは、Rの「考えた人すごいわ」に最も行ってみたいと思うのではないでしょうか。 

※あくまで個人の推測です

考えた人すごいわ」は2018年6月にオープンした清瀬市にあるベーカリーで、オープン以来行列の絶えない超人気店だそうです。その人気ぶりから店舗も着々と増え、現在は横浜菊名、仙台、広島と4店舗にまで拡大しているそうです。もちろん、売っているパンそのものがかなり魅力的なようですが、このネーミングでなければ、これほど話題になり人気も出なかったのではないではないでしょうか。

「マーケティングで最も重要な決定事項はネーミングである」 - アル・ライズ&ジャック・トラウト

マーケティングに関わっている皆さまは「ポジショニング」という言葉をよく使うと思いまが、このポジショニングという概念を初めて提唱したのは米国で「マーケティングのグル(尊師)」や「現代マーケティングの第一人者」と評されるアル・ライズとジャック・トラウトです。

彼らは、消費者の心の中にはカテゴリーごとにはしごがあり、最も好きなブランドははしごの一番上の段(ポジション)にぶら下がっていると説きます。そしてネーミングは、そのはしごにぶら下がるためのフックになるものだと。また、大概のマーケティング上の間違いは修正可能であるがネーミングだけは一度決めたら簡単に変えることはできないとも述べています。

ネーミングがマーケティングにおいて極めて重要な役割を果たすことを証明する例は数多くあります。例えば、皆さまがよくご存知の「おーいお茶」。この「おーいお茶」、発売当初は「缶入り煎茶」という名前で売り出していたそうですが、その当時は鳴かず飛ばずだったそうです。それが「おーいお茶」に名前が変えた初年度に売り上げが6倍になったそうです。

またあまりにも有名で皆様に説明するまでもないかと思いますがネスレさんのキットカットというネーミングを活用したマーケティング戦略。これもマーケティングにおけるネーミングの重要性を認識させてくれる好事例だと思います。

ここで再び皆さまに質問です。皆さまはキリンビール様の大ヒット製品、「本麒麟」の商品コンセプトはどのようなものかご存知ですか?

この記事によると

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「力強いコクと飲みごたえが味わえる、キリンの最高品質新ジャンル」

中味へのこだわりは

▽ドイツ産ヘルスブルッカーホップを一部使用した爽やかな苦味

▽長期低温熟成が生む、コクのある味わい

▽飲みごたえのある少し高めのアルコール6%

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だそうです。

私はこの記事を読むまでドイツ産ホップを使っていることも、長期低温熟成であることも、アルコール6%であることも知りませんでした。知っていたことといえば「本麒麟」というネーミング、赤色のパッケージ、そして「うまい」、「No1」と言っているだけのTVCMでしょうか(そこにはドイツ産ホップも長期低温熟成もアルコール6%も登場しません)。私のこの製品との接点は本麒麟というネーミングが大部分を占めていたと思います。それでも、「本麒麟」というネーミングからキリンさんの本気度や味のイメージを何となく想像してトライアルをしました。そしてこの製品を気に入って買い続けるようになりました。

※あくまで個人の経験です

前回の記事とも関連しますが多忙な現在の消費者は新製品が出た際に、その商品コンセプトをすべて理解したうえで購入決定しているのでしょうか?多くの消費者はコンビニやスーパーマーケットの店頭で一瞬だけ見たパッケージデザインとそこに書かれたネーミングだけで様々な新製品の購入判断をしているのではないかと思います(もちろんカテゴリーにもよりますが)。そうであればネーミングは新製品の売れ行きを左右する非常に大きな要因であり、その決定はアル・ライズとジャック・トラウトが主張するようにマーケティングで最も重要な決定事項であるといっても過言ではありません。

もちろん新商品の開発においてコンセプト開発が重要であることを否定はしません。またネーミングはコンセプトを短いワードで体現するべきものであると考えています。なので、ネーミングさえよければコンセプトがどうでもよいと言っているのではありません。ただ、コンセプトが100点でネーミングが50点の新製品とコンセプトが50点でネーミングが100点の新製品とではどちらが売れるのでしょうか? 少なくとも、コンセプト開発にかけられるのと同じかそれ以上の労力がネーミング開発にもかけられるべきではないでしょうか。

なお、次のセクションに移る前に少しだけ書いておきたいことがあります。ネットリサーチで「あなたは何を重視して●●(例:ビール)を購入しますか?」みたいな質問は定番だと思いますが、この質問で「商品名(ネーミング)がよい」という答えは決して上位には出てこないでしょう。場合によっては「商品名がよい」は選択肢の中にさえ入っていないかもしれません。私は、このような質問とその結果を見るたびに、これが現在行われているリサーチ、特に定量調査の限界ではないかという気がしてまうのですが・・・

なぜネーミングテストは行われないのか

さて、新製品の運命を左右する極めて重要なネーミングにリサーチはどの程度貢献しているのでしょうか?リサーチサプライヤーの皆さまは、普段ネーミングテストをどの程度実施する機会がありますでしょうか。クライアントサイドの皆さまは、普段どの程度ネーミングテストを調査会社に依頼していますでしょうか。

リサーチ業界には、新製品開発において、どのようなネーミングにすべきかを調査する「ネーミングテスト」なるものが、一応は存在します。しかしながら定量でも定性でもネーミングテストが実施すれることはかなり少ないのではないでしょうか。前回の記事で紹介させていただいたマクロミルさんのマーケティングリサーチ用語集やインテージさんのマーケティング用語集にも「コンセプトテスト」の説明はあっても「ネーミングテスト」の説明はありません。またGoogleで「コンセプトテスト」を検索すると約1180万件の検索結果が上がってきますがネーミングテストは167万件と段違いに少なくなっています。個人的にも過去の長いリサーチ経験においてネーミングテストに出会った機会はかなり限られます。どうも、ネーミングテストはあまり実施されていないというのがリサーチ業界の現状、つまりマーケティングで最も重要な決定事項であるネーミングの決定にリサーチは貢献していないのが現状のように思われます。

では、クライアントサイドにおいて新製品のネーミングはどのように決められているのでしょうか。まずはネーミングといえば真っ先に思い浮かぶ小林製薬様のネーミング決定に関する記事がありましたのでまずは紹介させていただきます。

「基本的にはマーケティング部のそれぞれの製品の開発担当者が中心となり、チーム全員で考えています。ネーミング会議ではダジャレみたいなものから、『なんだそれ(笑)』というものまで、大きなホワイトボードにびっしり、時には100以上の候補が並びます。開発担当者はその中から候補をいくつか絞って社長のところへ。最終的には社長の決裁を経て決定します」(小林製薬様 広報総務部 鄭氏)

そこにリサーチの利用はないようです。

また本麒麟を開発したキリンビール様ブランドマネジャー木村氏は本麒麟の開発秘話に関するインタビュー記事

「商品のネーミングは、商品開発と並行しながら決定します。コンセプトの段階から、ネーミングは並行して考えていきます。子どもの名前と一緒で、いざ、商品が完成した時にやっぱりこうだよね、と決める面もあります。」

と語っておられます。

新製品のネーミングはリサーチが係わっている新製品開発プロセスとは別次元の世界で開発・決定が行われているようです。

しかしながら、商品の命運を左右する極めて重要なネーミングがリサーチ抜きで決定されてしまってよいのでしょうか。これはリサーチ業界が、ネーミングに関する有効なリサーチ方法をクライアントに提供できていないということの裏返しかもしれません。リサーチが役立たずと言われているようで我々リサーチサプライヤーにとっては悔しいことですね。

では、今後リサーチサプライヤーの皆さまがクライアントさんからネーミングをテストしたいと相談されたらどのようなリサーチを提案すればよいのでしょうか。現在一般的に行われているネーミングテストではクライアントの期待に応えるのには不十分なのかもしれません。

そこで、めっちゃ真剣にネーミングテストと向き合って、クライアントに提案してください。そしてクライアントに全力で強い気持ちをぶつけてほしいと思います。みんなの強さを、信じたいと思いますね。そこに何の嘘もないです。

間違いだらけのネーミングテスト

サプライヤーサイドの皆さんはクライアントさんからネーミングテストのリクエストがあればどのようにネットリサーチの調査票を作ったりグルインのディスカッションフローを作ったりしますか。

まずは米国のLexiconというネーミング開発会社による、「the wrong way to do naming research(こんなネーミングテストはやってはいけない)」というブログ記事の中からネーミングテストのNGを紹介させていただきます。

『あなたは定性であれ定量でありネーミングをテストする際に調査項目をどのように設定するだろうか。多くの方は、ネーミングの候補を呈示して、「好意度」と「コンセプトとのマッチ度」を評価しろと教えられているのではないだろうか。

このような質問によってネーミングを決定することは、あなたのようなマーケティングのプロフェッショナルが、ブランド戦略を調査モニターに100ドル支払って決めさせているようなものだ。そして、あなたは、調査するということで、消費者に食器用洗剤やスナック菓子を買う時にも、車や家を買う時のようなロジカルな意思決定を求めているのである。

また、定量調査の質問で

「このネーミングはどのくらい発音しやすいですか?以下の中から最もあてはまるものをお選びください」

  • 非常にそう思う
  • ややそう思う
  • どちらともいえない
  • あまりそう思わない
  • 全くそう思わない

​といったような5ポイントスケールの質問がよくなされるが、実際に声に出して発音させることもなく、このような質問をしてどのような意味があるのだろうか?

最も酷い質問は

「この製品の名前が▲▲だったら、あなたはこの商品をどの程度買いたいですか?」

である。クライアントからしばしばこのような質問を調査票に入れてくれと頼まれるが、断り切れずにしぶしぶ調査票に入れても結果は明らかである。いくつかの候補の中でそのネーミングが、最も説明的であるものが常に最も高い購入意向を得る。例えばインテルが昔、新しいCPUの名前としてProChipとPentiumをテストしていたらProChipの購入意向が高かったであろう。しかしながら、PentiumとProChip、新しいCPUの名前としてどちらが優れていたのだろうか?なぜ、インテルはPentiumという名前を付けたのであろうか?』

また、皆さまは定量であれ定性であれネーミングテストにおいて、好意度(Likability)を調査票やディスカッションフローに入れようとするかと思いますが米国のAnswered, IncのLisa Bertelsen氏は、「Using fact-based research to test brand names」という記事の中でネーミングテストにおいて好意度(Likability)を指標とすることの危険性について次のように語っています.

『消費者に、そのネーミングの好意度を聞き、優劣を決めるのは、非常にミスリーディングな結果を招きで危険である。多くの研究が一般の人は、驚き、普通でない、予想外のものに対しては、自分の持っている世界観に反するため、本能的に嫌悪感を抱くことを証明している。そこで、例えばYahoo!といった大胆でイノベーティブな名前は、テストされると好意度は常に低い評価となる。しかしながら、今、Yahoo!という名前のすばらしさを否定する人は皆無であろう。

もし、ネーミングを好意度で評価するのであれば、誰からも反感を買わない凡庸なネーミングを選択することになるであろう。ただし、それは同時に、そのネーミングは誰からも熱烈に愛されはしないであろう。見たことも聞いたこともなく、また普通でないネーミングは初期段階では心理的な抵抗を生むが、記憶に残り、また消費者がそれを受け入れ始めると差別化につながるのである。』

ネーミングテストは定性調査で行え

まずはネーミングテストのNGを紹介させていただきました。ではNGではないネーミングテストとはどのようなものなのでしょうか。ネーミングテストはどうあるべきなのでしょうか。ネーミングは単純なネットリサーチで決めるべきものではなさそうです。定性調査によって、候補となるネーミングを、もっと深い部分において理解し評価することが必要です。具体的には・・・

まずは米国の定性調査会社Focus Forward Qualitative Research、Myra Summers氏の記事からそのポイントを抜粋して紹介させていただきます。

『定性調査はネーミングがどのように発話されるかを確認することができるという定量調査にはないアドバンテージがある。最初にモデレーターが何もヒントを与えることなく、テストしたいネーミングを見て発音してもらおう。このテストで、そのネーミングがどのように発音されるのか、意図通りに発音されるのか、発音する際につっかえないかを確認することができる。このネーミングの発音はその名前がどのようなカテゴリーに向いているかも確認できる。例えば子音がトゲトゲしい響きのワードは、赤ちゃん用のおしりふきには適さないであろうが、住居用クリーナーには適しているかもしれない。キャンディやスナック菓子においては響きが楽しかったり、発音したりするのが楽しい言葉が適している。

定性調査(グループインタビュー)において調査されるネーミング候補は最大20程度であるべきだ。この候補は事前に商標登録のチェックを済んだものであることが望ましい。まずは、その候補を5つ程度までに絞り込む。この絞り込む際のエクササイズはダイレクトで単純であるべきで、ここに時間を費やすより、絞り込まれたネーミングそれぞれについて深く理解するためにより時間を費やすべきだ。なので、ここでのテクニックの例としては、クライアントが重要だと考える機能面、情緒面の製品特長に対して「非常にあてはまる」~「全くあてはまらない」の5段階のスケールの紙を用意して評価させるのがよいであろう。また別のテクニックとしては、その製品で最もアピールしたいアトリビュートを2つ選んで2軸のマップ(例:「高級な vs. リーズナブル」の軸と「洗練された vs 親しみやすい」の軸)、を用意して、そのマップ上に候補のネーミングを配置させるといったことも考えられる。このテクニックによって、どのネーミングが意図する製品イメージを表現できるのかを理解することができる。

上記によって候補を5つ程度に絞り込んだら、その候補をより深く理解するためのエクササイズを行う。この段階においては以下のような様々なプロジェクティブテクニック(投影法)が役立つ。

<連想テスト>

最初にすべきことは、連想テストである。このテストは対象者にネーミング候補を書いたボードを呈示して思い浮かんだことを自由に述べてもらうといったテストである。この連想テストによってネーミングが、製品コンセプト、ブランドパーソナリティ、製品特長や狙っている情緒面のフックにマッチするかを理解することができる。

<マッチングゲーム>

マッチングゲームはそれぞれのネーミング候補が、どの程度コミュケーション目的を達成するかを理解できる。例えば5つの候補のネーミングリストとダミーを含めた5つの製品コンセプト文を用意して、どのネーミングがどの製品コンセプト文に最もマッチするかを聞いていく。

<ビジュアルラダーエクササイズ>

対象者に20段のはしごのイラストが書いたボードを用意する。そのはしごのイラスト上に各候補のネーミングが何段目くらいになるかを考えて配置させる。このテクニックは、あるアトリビュートに対してどのネーミングが適しているかが理解できるだけではなく、ある候補のネーミングが他の候補のネーミングに対してどの程度の差別性があるかが理解できる。

<擬人化法>

そのネーミングから、その商品がどのような人か、性別、年齢、職業、性格、興味関心、どのようなライフスタイルか等を想像し描写してもらう擬人化法もネーミングを深く理解するための有効なテクニックである。また、その人に長所や短所等を質問することによって、そのネーミングの潜在的な強みや問題点を浮かびださせることもできる。様々な写真を用意して、あるネーミングが、どの写真に最もマッチするか、またその理由を答えさせる写真投影法も擬人化法と同様に有効なテクニックである。

これらのプロジェクティブテクニックは様々な製品のセンサリー特長(サウンド、香り、テキスチャ、見た目、味等)について実施して理解されるべきである。例えば、我々は、お菓子メーカーの調査で、あるネーミングの候補を呈示し、どのような見た目か、食べたらどのような音がするか、どのような食感がしそうか、そして食べたらどのような感情になりそうかを尋ねた。するとある候補のネーミングは「JOY、花火、太陽の日差し、家族との絆」といった連想がなされ、日常のありふれたスナック菓子を超えた製品であるというアピールをしたかったブランドチームに採用された。

ネーミングテストはたとえネーミングが最終決定された後でも実施するのは有効である。決定されたネームを上記の定性テクニックを使ってテストすることにより、ターゲットに対するどのようなコミュニケーション(広告宣伝のトーン&マナー)を取るのが有効なのかを理解するのに役立つであろう。』

また、先ほど紹介したLisa Bertelsen氏は記事の中で連想テストについてさらに詳しく述べています。同氏はネーミングはコンテキストに沿ってテストされるべきで、特に連想テストには段階があり、その段階ごとにテストされ理解されるべきだと主張しています。

『ブランドネームは、特定の文脈に沿ってテストされるべきである。その言葉が文字通りの意味を伝えるのか、または隠喩的な何か別の意味を伝えるのかを理解する必要がある。ある言葉は、特定のカテゴリーの名前で何かを伝える時も、別のカテゴリーの名前であれば別のことを伝える可能性がある。このような疑問に答えるために以下の段階的な連想テストを実施することをおすすめする。

Phase I: そのネーミングから連想される「考え」、「感情」、「経験」を理解する

私はネーミングから連想される量と多様性をそのネーミングの次元性(dimensionality)と呼んでいる。次元性が大きいということは、差別化できる可能性が強いネーミングであるということの初期指標であり、また記憶されやすく、消費者を感情面でエンゲージする力が強いということだと考えられる。例えば「juju」というネーミングがあったとしよう。このネーミングに対して消費者が抱く連想は様々な範囲に及び、多様な意味を想像させる。皆さんは以下のような連想をするのではないだろうか・・・groovy(かっこいい)、hip(いかす)、taboo(タブー)、mysterious(ミステリアスな)、exotic(エキゾチック)、witchcraft(小悪魔)、confidence(自信)、luck(幸運)、illicit(反道徳的な)、powerful(パワフル)等々。このJujuという名前は、例えば同時にテストされた「canopy」と比べると明らかに多次元性(多様な連想をもたらす)がある。多次元性があるネーミングはブランドネームの柔軟性や拡張性の指標であることを考えると、canopyと比べるとブランドマネジャーに遥かに多くの創造性の許容範囲を与えるのであろう。

Phase II: そのネーミングがあるカテゴリーの名前だということが伝えられたら連想がどのように変化するかを理解する

例えば、ある会社がガソリンの名前として”Eco-First”をテストしたい場合、私は最初に、これがガソリンの商品名だということは伝えずにテストを行う。なぜなら多くの対象者はガソリン業界に対する先入観があるからである。そこで、私はまずEco-Firstをスキンケア製品として紹介して、清潔感、純粋さ、やさしさが伝わるかどうかを質問する。このダミーカテゴリーの後に、実はガソリンブランドだったらという質問に移る

Phase III: そのネーミングがある企業から出される製品名だということが伝えられたら連想がどのように変化するかを理解する

これは、その企業の消費者からの信頼度を理解するための重要なテストである。例えば対象者がEco-Firstというガソリンの名前に対してポジティブな連想を抱き気に入っていたとする。その後、これはBP(イギリス石油会社)から発売されるとしたらと聞くとたぶん多くの対象者は評価が一変するであろう。オイル流出事故で有名なBPと聞くと、Eco-Firstという名前は全く信頼性がなくなるのである。ネーミングが何を伝えるかは重要だが、誰がそれを伝えるかも同じくらい重要なのである。』

以上、定性調査でどのようなネーミングテストをすべきかについて紹介させていただきました。

個人的にもうひとつ付け加えさせていただくならば、今の時代、そのネーミングがSNSや口コミで「バズりやすい」かどうかを理解することも非常に重要なのではないかと思います。この点に関しては、グループインタビューであれば、そのネーミング候補を呈示した際にどの程度、話が盛り上がるかが大きな指標になるのではないでしょうか。ちなみに最初に紹介した「考えた人すごいわ」は「バズりやすい」という点で秀逸なネーミングだと思います。

クライアントサイドの皆様。今回紹介したようなネーミングの調査はネーミングの決定に役に立たないでしょうか?最終的には社長のツルの一声で決まることになるのかもしれません。それは仕方ないとしても、社長に定性調査からのファインディングをインプットすることには、絶対に調査費を費やす価値があることだと思います。

※あくまで個人の見解です。効果効能には企業差があります。

リサーチはマーケティングで最も重要なネーミングの決定に貢献してるんやろか。

めっちゃ悩んで、結論出しました。今は貢献してないって。でも定性調査がネーミングの決定に貢献できるんやという信念・・・そこに関して何の嘘もないです。

最後まで読んでくれてありがとう。

感謝しかないですね。